「歩けるようになったから、病院には行かなかった」
「何年も前の捻挫なのに、最近また足首が気になる」
「このままにしておいて大丈夫なのか知りたい」
足首の捻挫は身近なけがで、腫れが引いて歩けるようになると、そのまま様子を見る方も少なくありません。多くの捻挫は、時期に合った手当てとリハビリテーションで回復が期待できます。一方で、靭帯(じんたい)がゆるんだまま治ったり、足首の動きが十分に戻らなかったりすると、何年もたってから足首の不調につながることがあります。
この記事では、捻挫を「放置」したときに長い目で起こりうること、変形性足関節症(へんけいせいそくかんせつしょう)の原因との関係、相談を考えてほしいサイン、そしていまからできることを整理します。不安をあおるためではなく、「自分の足首はどうなのか」を考えるきっかけにしていただくための記事です。
監修:宇賀治 修平(さくら通り整形外科クリニック 院長・整形外科専門医)
捻挫の「放置」とはどんな状態か
この記事でいう「放置」は、捻挫をしたあとに、足首の状態を確かめないまま過ごしてしまうことを指します。たとえば、次のような場合です。
- 腫れが引いて歩けるようになったので、受診しなかった
- 痛みが軽くなった時点で、通院やリハビリをやめた
- 足首のグラつきや違和感はあるが、「昔の捻挫だから」とそのままにしている
痛みが引くことと、傷めた靭帯や足首の動き・バランスが元に近い状態に戻ることは、同じではありません。歩けるようになっても、靭帯がゆるんでいたり、足首を支える筋肉の働きが戻りきっていなかったりすることがあります。
放置したときに起こりうること
捻挫のあとに足首の状態が十分に戻らないまま過ごした場合、長い年月の中で、次のような流れをたどることがあります。あくまで一例で、進み方や程度には個人差があります。
- 靭帯がゆるんだまま治る
傷めた靭帯が、伸びたような状態で治ることがあります - 足首がグラつく・捻りやすくなる
足首を支える力が弱くなり、段差や不安定な場所で足首がぐらついたり、再び捻りやすくなったりすることがあります - 痛みや腫れが長引く
捻挫から時間がたっても、痛みや腫れが続くことがあります - 関節の一部に負担がかたよる
足首がぐらつく状態が続くと、関節の中で特定の場所に負担がかかりやすくなると考えられています - 軟骨がすり減り、変形につながることがある
長い年月の中で、関節の軟骨(なんこつ)がすり減り、変形性足関節症の一因になることがあります
足首のグラつきについては足首がグラつく・力が抜ける ― 慢性足関節不安定症、長引く痛みについては捻挫から3週間以上たっても足首が痛い、腫れについては腫れが引かない足首でくわしく説明しています。
※どの段階で、どのような状態になっているかは、診察と検査で確かめます。
変形性足関節症とはどんな病気か
変形性足関節症は、すねの骨と足首の骨(距骨〔きょこつ〕)でつくる足首の関節で、骨の表面をおおう軟骨がすり減り、骨の形が変わっていく病気です。ひざに起こる変形性膝関節症と同じように、関節の「すり減り」と「変形」が進んでいきます。
原因は捻挫だけではありません
足首の変形性関節症では、過去の捻挫や骨折など、けがが関わっている場合が多いとされています。足首のゆるみが長く続くことも、原因のひとつと考えられています。ただし、原因はけがだけではなく、足の形、関節リウマチなどのほかの病気、体重や仕事・スポーツでの足首への負担なども関わります。原因がはっきりしないこともあります。
主な症状
- 歩き始めや、長く歩いたあとの足首の痛み
- 足首の腫れや、熱っぽさ
- 足首が動かしにくい・しゃがみにくい
- 足首の形が変わってきた感じがする
症状の進み方は人によって異なり、多くは年単位でゆっくり変化します。また、レントゲンで見える変化の程度と、痛みの強さが一致しないこともあります。
院長の解説動画
変形性足関節症の原因・症状・治療の考え方
変形性足関節症とは何か、原因や症状、進み具合ごとの治療の考え方を院長が解説しています。病気の説明は1分ごろからです。動画では手術にも触れていますが、当院では手術は行っておらず、必要な場合は連携する医療機関にご紹介します。
相談を考えてほしいサイン
捻挫から時間がたっていても、次のような状態が続いている場合は、一度足首の状態を確かめることをおすすめします。
- 捻挫から数か月たっても、足首の痛みや腫れが残っている
- 段差や坂道で、足首がぐらつく感じがある
- 同じ側の足首を、何度も捻ってしまう
- 歩き始めや、長く歩いたあとに足首が痛む
- 足首が以前より動かしにくい・しゃがみにくい
- 足首の中で引っかかる感じや、音がすることがある
- 足首をかばって、ひざや腰にも負担を感じる
また、新しく捻挫をして、体重をかけられないほど痛い、腫れや内出血が強い、骨を押すと強く痛むといった場合は、骨折が隠れていることもあるため、早めに受診してください。捻挫と骨折の関係は捻挫だと思ったら骨折だった|見逃されやすい4つの骨折で説明しています。
当院での確かめ方
足首の状態は、ひとつの検査だけでなく、いくつかの確認を組み合わせて判断します。どの検査を行うかは、診察のうえで医師が決めます。
- 問診
いつ、どのように捻ったか、その後どう過ごしてきたか、いまどんなときに困るかをうかがいます - 診察
押して痛む場所、腫れ、足首の動く範囲、足首のぐらつきの程度などを確かめます - 画像検査
骨や関節のすき間の様子はレントゲンで、靭帯などのやわらかい組織は超音波エコーで確認します。必要に応じて院内のMRIで、軟骨や骨の内部も確認します - 理学療法士による評価
片足立ちのバランスや、足首まわりの筋力・動き方を確かめ、リハビリテーションの内容を考える材料にします
確認の結果、変形性足関節症の変化が見つかることもあれば、靭帯のゆるみや筋力の低下が中心のこともあります。結果は、画像をお見せしながらご説明します。
いまからできること
捻挫から時間がたっていても、足首の状態に合わせてできることがあります。多くの場合、手術以外の方法(保存療法)から始めます。
治療の考え方
- リハビリテーション理学療法士と一緒に、足首まわりの筋力やバランス、動きの範囲を整えていきます
- サポーター・テーピング足首のぐらつきが気になる場面で、足首を支える目的で使うことがあります
- 靴やインソールの調整足に合った靴を選び、必要に応じて中敷きで足元を整えます
- 体重や活動量の調整足首への負担が大きい場合は、日々の動き方を一緒に考えます
- お薬・注射痛みや炎症の状態によって、医師が必要と判断した場合に検討します
足首のぐらつきが強い場合や、関節の変形が進んでいる場合などには、手術が選択肢になることがあります。当院では手術は行っておりません。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介します。紹介先で手術を受けたあとのリハビリテーションは、当院で継続していただけます。
日常生活で気をつけたいこと
- 新しく捻挫をしたら、早めに受診して状態を確かめる
- 痛みが軽くなっても、自己判断でリハビリをやめない
- かかとが安定した、足に合った靴を選ぶ
- 運動の前に、足首をゆっくり動かして慣らす
- 痛みが強いときは、無理をして動かさない
院長の解説動画
捻挫を甘く見ないために——治療と予防の基本
足首の捻挫とは何か、治療の考え方と予防の方法を院長が解説しています。治療のお話は1分20秒ごろ、予防のお話は3分50秒ごろからです。
よくあるご質問
Q捻挫を放置すると、必ず変形性足関節症になりますか
A必ずなるわけではありません。捻挫をそのままにしても、問題なく過ごせる方もいます。ただ、足首のぐらつきや痛みが続く場合は、長い目で見て足首に負担がかかっている可能性があるため、一度状態を確かめることをおすすめします。
Q何年も前の捻挫でも、相談してよいですか
Aはい、ご相談いただけます。昔の捻挫のあとに、足首のぐらつきや違和感、歩いたあとの痛みなどが続いている場合は、いまの足首の状態を確認します。
Q痛みはないのですが、足首がぐらつく感じがあります。受診したほうがよいですか
A痛みがなくても、ぐらつきが続いている場合は、靭帯のゆるみや足首を支える力の低下が関わっていることがあります。気になる場合は、ご相談ください。
Qサポーターをしていれば、受診しなくても大丈夫ですか
Aサポーターは足首を支える助けになりますが、靭帯や軟骨の状態を確かめるものではありません。サポーターが手放せない状態が続いている場合は、一度足首の状態を確認することをおすすめします。
まとめ
- 多くの捻挫は回復が期待できるが、靭帯がゆるんだまま治ることもある
- グラつきや痛みが続くと、長い年月の中で変形性足関節症の一因になることがある
- すべての方に起こるわけではなく、進み方には個人差がある
- 気になるサインがあれば、昔の捻挫でも相談できる
- リハビリや靴の調整など、いまからできることがある
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