捻挫のあと足首の「前」が痛む|しゃがむと痛い前方インピンジメントとは

しゃがんで足首の前側に手を当てている女性 ― 足首の前が痛む・しゃがむと痛いときに ブログ
足首の捻挫部位別:足首の前側

「しゃがむと、足首の前が詰まるように痛い」

「階段を下りるとき、足首の前側がズキッとする」

「捻挫は落ち着いたはずなのに、足首を深く曲げきれない」

捻挫のあと、外くるぶしの痛みは引いたのに、足首の「前」だけが痛むことがあります。とくに、しゃがむ・階段を下りる・踏み込むといった、足首を深く曲げる動きで痛みが出る場合、「前方インピンジメント」と呼ばれる状態が関わっていることがあります。

この記事では、足首の前側の痛みに絞って、前方インピンジメントのしくみ、痛みが出やすい動作、ほかに考えられる原因、受診の目安、当院での確認のしかたを整理します。

監修:宇賀治 修平(さくら通り整形外科クリニック 院長・整形外科専門医)

足首の前側が痛むのはどんなとき

足首の前側の痛みには、いくつかの出方があります。じっとしていても痛むのか、特定の動きのときだけ痛むのかで、考えることが変わります。

前方インピンジメントで多いとされるのは、足首を深く反らしたとき(つま先がすねに近づく向きに曲げたとき)にだけ出る痛みです。この動きを背屈(はいくつ)といいます。しゃがみ込む、階段を下りる、坂道を上る、スポーツで踏み込むといった場面は、どれも足首を深く背屈させる動きです。

痛みとあわせて、「足首の前が詰まる感じがする」「反対側の足首ほど深く曲がらない」と感じる方もいます。

玄関で深くしゃがみ、靴ひもを結んでいる女性。足首が深く曲がっている
※ 写真はイメージです しゃがむ動きは、足首を深く反らす動きのひとつです

前方インピンジメントとは

インピンジメント(impingement)は、「挟まる」「ぶつかる」という意味の言葉です。足首の関節は、すねの骨(脛骨:けいこつ)と、その下にある距骨(きょこつ)という骨でできています。足首を反らすと、この2つの骨の前側どうしが近づきます。

ふつうは近づいても問題は起こりません。ところが、関節の前側に厚くなった組織や骨のでっぱりがあると、足首を反らすたびにそこが挟まれたり、ぶつかったりして、痛みや詰まる感じが出ることがあります。これが足関節前方インピンジメント(症候群)です。

足首を横から見た模式図。左は自然な角度の足首、右は深く反らした足首で、すねの骨と距骨の前側が近づき、関節の前で組織が挟まる場所を示している
前方インピンジメントのしくみ(模式図)。左:自然な角度の足首/右:深く反らしたとき。関節の前側(ピンクの印)で、厚くなった組織や骨のでっぱりが挟まれたり、ぶつかったりします

挟まるものによって、大きく2つのタイプに分けて説明されます。

やわらかい組織が挟まるタイプ

関節を内側から包む膜(滑膜:かつまく)や、傷んだ靭帯が修復される過程でできた厚みのある組織が、関節の前側で挟まるタイプです。捻挫のあとに起こるものは、このタイプが関わっていることがあります。レントゲンには写りにくいのが特徴です。

骨のでっぱりがぶつかるタイプ

すねの骨や距骨の前側のふちに、骨棘(こつきょく)と呼ばれる小さな骨のでっぱりができ、足首を反らすとぶつかるタイプです。サッカーなど、足首に繰り返し負担がかかるスポーツをしている方にみられることが知られており、「フットボーラーズアンクル」と呼ばれることもあります。

やわらかい組織が挟まるタイプ骨のでっぱりがぶつかるタイプ
挟まる・ぶつかるもの厚くなった滑膜や、修復の過程でできた組織骨のふちにできたでっぱり(骨棘)
きっかけの例足首の捻挫捻挫の繰り返しや、スポーツなどによる負担の積み重ね
画像検査での見え方レントゲンには写りにくい。超音波エコーやMRIで確認することがあるレントゲンで確認できることがある

※2つのタイプは重なっていることもあります。また、骨棘があっても痛みが出ない方もいます。画像の所見だけでなく、症状や診察の結果とあわせて判断します。

捻挫のあとに起こりやすい理由

足首を内側に捻る捻挫では、外くるぶしの前にある靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫なひも状の組織)が傷むことが多く、その近くにある関節の前側の組織にも負担がかかります。

  • 修復の過程で厚くなる傷んだ靭帯や滑膜が修復されるときに、組織が厚みをもって残ることがある
  • 炎症が続く関節の中の炎症が長引き、滑膜が腫れた状態が続くことがある
  • 足首のゆるみ捻挫のあとに足首のゆるみが残ると、関節の中で骨が動きすぎ、前側に負担がかかりやすくなると考えられている

そのため、捻挫そのものの痛みが落ち着いてしばらくたってから、「前だけが痛い」と気づくことがあります。

足首がグラつく感じもある場合は、足首がグラつく・力が抜けるとき(慢性足関節不安定症)もあわせてご覧ください。

痛みが出やすい動作

足首を深く反らす動きで、前側に痛みや詰まる感じが出るのが典型的とされています。次のような場面で当てはまるものがないか、振り返ってみてください。

階段を下りる

階段を下りてくる人のイラスト。上の段に残した足のひざと足首が深く曲がっている

坂道を上る

坂道を上るときに足首が深く曲がる様子のイラスト

踏み込む

スポーツで前に踏み込んだときに足首が深く曲がる様子のイラスト

どれも、足首が深く反る(背屈する)動きです

  • 深くしゃがむと、足首の前が痛い・詰まる
  • 階段を下りるとき、後ろに残した足の足首の前が痛む
  • 坂道を上ると、足首の前が痛む
  • ダッシュやジャンプの踏み込み・着地で、足首の前が痛む
  • 反対側と比べて、足首を反らせる角度が小さい
  • 足首の前側が腫れぼったい、押すと痛いところがある

※このチェックは、受診のときに症状を伝えるための目安です。当てはまる数で前方インピンジメントかどうかを判断できるものではありません。

当てはまる動作がいくつかあり、数週間たっても変わらない方へ ― 当院での確認のしかたを見る →

足首の前側が痛むほかの原因

足首の前側が痛むからといって、前方インピンジメントとは限りません。捻挫のあとの前側の痛みには、次のような原因も考えられます。

  • 軟骨の損傷距骨の表面をおおう軟骨や、その下の骨が傷んでいる
  • すねの骨どうしをつなぐ靭帯の損傷足首の少し上で、すねの2本の骨(脛骨と腓骨)をつなぐ靭帯が傷んでいる
  • 腱の炎症足首の前を通って足の甲へ向かう腱や、そのまわりに炎症が起きている
  • 骨折小さな骨折や、繰り返しの負担による骨折(疲労骨折)がある
  • 関節の変形関節の軟骨がすり減り、変形が進んでいる

これらは痛む場所や動作が似ていることがあり、ご自身で見分けるのは難しいものです。捻挫のあとの長引く痛み全体については、捻挫から3週間以上たっても足首が痛いときで、考えられる原因をまとめています。

受診を考えてほしい目安

次のような場合は、一度、整形外科で原因を確認することをおすすめします。

  • 捻挫から数週間たっても、しゃがむ・階段を下りるなどの動作で足首の前が痛む
  • 足首が以前ほど深く曲がらず、左右差がある
  • スポーツや仕事に戻ると、足首の前の痛みがぶり返す
  • 足首の前側の腫れが続いている
  • 足首が引っかかる感じや、動かせなくなる感じがある

体重をかけられない、腫れや痛みが急に強くなった、赤みや熱をもっているといった場合は、様子をみずに早めに受診してください。

足首の前の痛みが続いている方へ

上の目安に当てはまる場合は、整形外科で原因を確認できます。ご予約は、WEBまたはお電話で受け付けています。

当院での確認のしかた

当院では、足首の前側の痛みについて、次のような観点で確認します。

問診

いつ、どのように捻ったか、どの動作で痛むか、スポーツや仕事の内容、これまでの捻挫の回数などをうかがいます。

触診・徒手検査

押して痛む場所、足首を反らしたときに痛みが再現されるか、反らせる角度の左右差、関節のゆるみの有無を確認します。

レントゲン

骨折の有無や、骨のふちのでっぱり(骨棘)がないかを確認します。

超音波エコー/MRI

レントゲンに写りにくい、関節の前側のやわらかい組織や靭帯の状態を超音波エコーで観察します。必要に応じて院内のMRIで、軟骨や骨の内部の状態を確認します。

足首の前側に超音波エコーのプローブを当てて観察している手元
※ 写真はイメージです 超音波エコーで、足首の前側の組織をその場で観察します

理学療法士による評価

足首の動く範囲、ふくらはぎの柔軟性、筋力、バランス、しゃがみ方や歩き方を確認し、足首の前側に負担が集まる動き方になっていないかをみます。

治療の考え方

治療の内容は、挟まっているものの種類、症状の強さ、スポーツや仕事の状況によって変わります。診察と検査の結果をふまえて、医師がご説明します。一般的には、まず手術以外の方法(保存療法)から始めます。

  1. 負担の調整 痛みが出る動作や運動量を一時的に見直し、関節の前側への刺激を減らします
  2. リハビリテーション 理学療法士が、足首の動きや筋力、バランス、動作のくせを評価し、状態に合わせた運動を行います。足首のゆるみがある場合は、その対応もあわせて行います
  3. 薬・注射など 症状に応じて、炎症や痛みをおさえる薬や注射を医師の判断で検討します
  4. 靴・インソールなどの調整 足首にかかる負担を減らす目的で、靴や中敷きの調整を検討することがあります
インソール(中敷き)の裏に、形の違うパッドを組み合わせて貼り、調整している理学療法士の手元
※ 写真はイメージです 足の状態を確認しながら、インソール(中敷き)にパッドを組み合わせて調整することがあります

保存療法を続けても症状が変わらず、生活やスポーツに支障が残る場合には、挟まっている組織や骨のでっぱりを取り除く手術が選択肢になることがあります。

なお、当院では手術は行っておりません。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介します。紹介先で手術を受けたあとのリハビリテーションは、当院で継続していただけます。

日常生活で気をつけたいこと

ここで紹介するのは一般的な考え方です。受診されている方は、担当の医師や理学療法士の指示を優先してください。

痛みが出る深さまで無理に曲げない

痛みや詰まる感じが出るところまで繰り返し深くしゃがむと、関節の前側への刺激が続くことがあります。痛みが出る手前までにとどめ、低い位置の作業では片ひざをつくなど、足首を深く曲げなくてすむ姿勢を工夫してみてください。

ストレッチで押し込まない

「足首が硬いから」と、体重をかけて足首を強く反らすストレッチを自己判断で続けるのは、おすすめできません。前方インピンジメントでは、反らす動きそのものが痛みのきっかけになることがあるためです。どのような運動が合うかは、評価のうえでお伝えします。

スポーツは痛みの出方を見ながら

練習の内容や量によって痛みがどう変わるかを、簡単にメモしておくと、受診のときに役立ちます。痛みをがまんして続けるかどうかは、自己判断せずにご相談ください。

よくあるご質問

Qふだん歩くぶんには痛くありません。それでも受診したほうがよいですか

A前方インピンジメントでは、平らな道を歩くときには症状が出にくく、深くしゃがむ・踏み込むといった動作でだけ痛むことがあります。数週間たっても同じ動作で痛みが続く場合や、スポーツ・仕事で困っている場合は、一度原因を確認されることをおすすめします。

Qレントゲンで「骨に異常はない」と言われました。それでも前方インピンジメントのことはありますか

Aやわらかい組織が挟まるタイプは、レントゲンには写りにくいとされています。症状が続く場合は、診察や、超音波エコー・MRIなどの検査をあわせて確認することがあります。

Q骨のでっぱり(骨棘)があると言われました。手術が必要ですか

A骨棘があっても、痛みなどの症状が出ない方もいます。手術が必要かどうかは、画像だけでなく、症状の強さや生活・スポーツへの影響、保存療法の経過をふまえて医師が判断します。当院では手術は行っておらず、必要と判断した場合は連携する医療機関にご紹介します。

Q何年も前の捻挫が原因ということはありますか

A以前の捻挫や、捻挫の繰り返しが関わっていることはあります。ただ、足首の前側の痛みには別の原因もあるため、現在の症状をもとに確認します。覚えている範囲で、これまでの経過をお知らせください。

まとめ

  • しゃがむ・階段を下りる・踏み込むなど、足首を深く反らす動きで前側が痛むときは、前方インピンジメントが関わっていることがある
  • 挟まるものには、やわらかい組織と、骨のでっぱり(骨棘)の2つのタイプがある
  • やわらかい組織のタイプはレントゲンに写りにくく、診察やエコー・MRIをあわせて確認する
  • 足首の前側の痛みには、軟骨の損傷や腱の炎症など、ほかの原因もある
  • 治療はまず保存療法から。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介する

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足首の「前」の痛みは、何が挟まっているのか、ほかの原因はないかを確かめることから始まります。

さくら通り整形外科クリニック(福井市日之出)/整形外科・リハビリテーション科

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この記事を執筆した人
宇賀治 修平 院長
宇賀治 修平
  • 医学博士
  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本足の外科学会認定医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 日本整形外科学会認定リハビリテーション医
ブログスポーツ足関節捻挫
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