「捻挫と言われたのに、足の外側の痛みがなかなか引かない」
「歩けるから、骨は大丈夫だと思っていた」
「押すと、骨の一か所だけがひびくように痛い」
足首を捻ったあと、「捻挫でしょう」と言われた、あるいはご自身でそう考えて様子をみていた。それなのに痛みが長引いていると、「実は骨折だったのでは」と気になってくるものです。
足首の捻挫と同じ捻り方で、足首のまわりの小さな骨が折れることがあります。こうした骨折のなかには、けがをした直後には分かりにくいものがあります。この記事では、時間がたってから見つかることのある4つの骨折と、痛む場所の目安、受診の目安、当院での確認のしかたを整理します。時間がたってからでも、骨の状態を確かめることはできます。
監修:宇賀治 修平(さくら通り整形外科クリニック 院長・整形外科専門医)
捻挫と言われたのに痛みが続くとき
足首の捻挫は、関節を支える靭帯(じんたい:骨と骨をつなぐ丈夫な組織)を傷めるけがです。痛みや腫れは時間とともに落ち着いていくのが一般的ですが、数週間たっても痛みが続く場合は、靭帯以外の場所にも原因がないかを確かめることがあります。

長引く痛みの原因はひとつではありません。靭帯の傷が残っている、腱や軟骨を傷めているといった場合のほかに、骨に小さな骨折がある場合もあります。原因の全体像は、捻挫から3週間以上たっても足首が痛いときでまとめています。この記事では、そのうち「骨折」に絞ってお話しします。
※痛みが続くからといって、骨折があるとは限りません。原因は診察と検査で確かめます。
骨折が最初に分かりにくい理由
「骨折なら、歩けないほど痛いはず」と思われがちですが、骨折の場所や大きさによっては、体重をかけて歩ける場合があります。足首のまわりの小さな骨折が分かりにくい理由として、次のようなことが挙げられます。
- 捻挫と同じ捻り方で起こる足首を内側に捻ったときに、靭帯や腱に引っぱられて、骨の一部が欠けることがあります
- 腫れる場所・痛む場所が近い捻挫と同じように外くるぶしのまわりが腫れるため、見た目では区別しにくくなります
- レントゲンに写りにくいことがある骨のかけらが小さい場合や、骨どうしが重なる場所では、撮る向きによって分かりにくいことがあります
- 歩ける場合がある歩けることだけでは、骨折がないとは言い切れません
このため、けがをした直後の診察やレントゲンで骨折がはっきりしなくても、あとから分かることがあります。痛みの経過をみて、もう一度確かめることは、整形外科の診療では珍しいことではありません。
見逃されやすい4つの骨折
捻挫と間違われやすい骨折のうち、代表的なものを4つ紹介します。いずれも、足首の外側から足の外側にかけての場所です。
- 1外くるぶしの先端靭帯がついている骨の一部が、引きはがされる骨折
- 2足の外側の出っぱり小指側のふちの中ほどにある、第5中足骨のつけ根の骨折
- 3外くるぶしの少し前かかとの骨の、前の端の骨折
- 4外くるぶしのすぐ下距骨(きょこつ)の、外側の出っぱりの骨折
1.外くるぶしの先端の骨折(裂離骨折)
外くるぶし(腓骨:ひこつ の下の端)には、捻挫で傷めやすい靭帯がついています。足首を内側に捻ったとき、靭帯が切れる代わりに、靭帯がついている骨の一部が引きはがされることがあります。これを裂離骨折(れつりこっせつ。剥離骨折とも呼ばれます)といいます。
骨のかけらが小さいと、レントゲンで分かりにくいことがあります。成長期のお子さんは、大人と骨の性質が違うため、とくに注意して確かめます。
2.足の外側の出っぱりの骨折(第5中足骨のつけ根)
足の小指側のふちを、かかとからつま先へなぞっていくと、中ほどに骨の出っぱりがあります。ここが第5中足骨(だいごちゅうそくこつ)のつけ根です。足首を内側に捻ったときに、ここにつく腱などに引っぱられて折れることがあります。
足首そのものより少しつま先寄りにあるため、「足首の捻挫」と思っていると気づきにくい場所です。また、第5中足骨の骨折は、折れた位置によって治り方や治療の進め方が変わります。どの位置かは、レントゲンなどで確認します。
3.かかとの骨の前の端の骨折(踵骨前方突起)
かかとの骨(踵骨:しょうこつ)の前の端には、くちばしのように突き出た部分があり、ここにも靭帯がついています。外くるぶしの少し前、やや下のあたりです。足首を内側に捻ったときに、靭帯に引っぱられて骨の一部が欠けることがあります。
捻挫で傷めやすい靭帯と場所が近く、痛む場所だけでは区別しにくい骨折です。
4.距骨の外側の出っぱりの骨折(距骨外側突起)
距骨は、すねの骨とかかとの骨の間にある骨です。その外側には小さな出っぱりがあり、外くるぶしのすぐ下あたりにあたります。足首を反らした状態で強い力が加わったときに折れることがあり、スノーボードでのけがで知られています。
ふつうのレントゲンでは骨が重なって分かりにくいことがあり、よりくわしい画像検査で確認することがあります。
※ここに挙げたもの以外の骨折や、軟骨の傷が見つかることもあります。どれにあたるかは、診察と画像検査で確認します。
骨の状態を確かめたいサイン
次のような様子がある場合は、靭帯だけでなく、骨の状態も確かめておきたいところです。当てはまるものがないか、振り返ってみてください。

- 骨の出っぱりの一か所を押すと、はっきり痛い
- 足の外側(小指側のふちの中ほど)を押すと痛い
- 体重をかけたときや踏み返すときに、同じ場所が痛む
- 腫れや内出血が、なかなか引かなかった
- 数週間たっても、痛みがあまり変わらない
- でこぼこ道や坂道で、外くるぶしの前や下が痛む
※このチェックは、受診のときに症状を伝えるための目安です。当てはまる数で骨折かどうかを判断できるものではありません。
腫れが続いている場合は、捻挫の腫れが引かないときもあわせてご覧ください。
受診を考えてほしい目安
次のような場合は、一度、整形外科で骨の状態を確認することをおすすめします。
- 捻挫から数週間たっても、痛みが続いている
- 骨の一か所に、押すと痛い場所がある
- 痛みのために、かばった歩き方になっている
- スポーツや仕事に戻ると、痛みがぶり返す
- けがをしたときに受診しておらず、レントゲンを撮っていない
体重をまったくかけられない、足の形がふだんと違う、腫れや痛みが急に強くなった、しびれや皮膚の色の変化があるといった場合は、様子をみずに早めに受診してください。
けがから時間がたっていても、骨の状態を確かめることはできます。「いまさら受診しても」とためらう必要はありません。ほかの医療機関で検査を受けている場合は、分かる範囲でその内容をお知らせください。
当院での確認のしかた
当院では、捻挫のあとに続く痛みについて、次のような観点で骨の状態を確認します。どの検査を行うかは、診察のうえで医師が判断します。
問診
いつ、どのように捻ったか、そのとき歩けたか、どこが腫れたか、これまでの受診や検査の有無、スポーツや仕事の内容をうかがいます。
触診
骨の出っぱりをひとつずつ押して、痛む場所を確かめます。靭帯や腱が通る場所との違いをみていきます。
レントゲン
痛む場所に合わせて、撮る向きを変えて確認します。けがの直後には分かりにくかった骨折が、時間がたってから確認できることもあります。

超音波エコー
骨の表面や、靭帯・腱の状態を、その場で観察します。
MRIなど
レントゲンで分かりにくい場合は、必要に応じて院内のMRIで、骨の中の変化や、軟骨・靭帯の状態をくわしく確認します。ほかの検査が必要と判断した場合は、その方法をご案内します。
骨折が見つかったときの治療の考え方
治療の内容は、骨折の場所、骨のずれの大きさ、けがからの期間、スポーツや仕事の状況によって変わります。診察と検査の結果をふまえて、医師がご説明します。手術以外の方法(保存療法)では、次のようなことを組み合わせます。
- 固定・装具など 状態に応じて、一定の期間の固定や、装具・サポーターの使用を医師の判断で検討します
- 体重のかけ方の調整 骨の状態に合わせて、体重をかける量や歩き方を調整します
- リハビリテーション 理学療法士が、足首の動きや筋力、バランスを評価し、状態に合わせた運動を段階的に行います
- 経過の確認 骨の状態を、画像検査で確かめながら進めます
骨のずれが大きい場合や、骨がつきにくい場所の骨折、保存療法を続けても症状が変わらない場合には、手術が選択肢になることがあります。
なお、当院では手術は行っておりません。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介します。紹介先で手術を受けたあとのリハビリテーションは、当院で継続していただけます。
骨だけでなく靭帯も傷めていて、足首がグラつく感じがある場合は、足首がグラつく・力が抜けるとき(慢性足関節不安定症)もあわせてご覧ください。
受診までに気をつけたいこと
ここで紹介するのは一般的な考え方です。受診されている方は、担当の医師や理学療法士の指示を優先してください。
痛みをがまんして運動を続けない
骨に傷がある場合、強い負荷を繰り返すと、治り方に影響することがあります。痛みが出る運動や長時間の歩行は、原因が分かるまで控えめにしてください。

強く揉まない・無理に動かさない
痛む場所を強く揉んだり、痛みをがまんして足首を動かし続けたりすることは避けてください。
経過を整理しておく
いつ・どのように捻ったか、どこが腫れたか、いつごろ検査を受けたかを整理しておくと、診察がスムーズです。ふだん履いている靴でお越しください。
よくあるご質問
Q歩けていても、骨折していることはありますか
A骨折の場所や大きさによっては、歩ける場合があります。歩けることだけでは判断できないため、痛みが続く場合は確認をおすすめします。
Q最初のレントゲンで「骨に異常はない」と言われました。もう一度撮る意味はありますか
A小さな骨折は、けがの直後のレントゲンでは分かりにくいことがあります。痛みが続く場合は、撮る向きを変える、時間をおいて撮り直す、超音波エコーやMRIを組み合わせるといった方法で確認することがあります。必要かどうかは、診察のうえで判断します。
Q時間がたってから骨折が見つかった場合、もう遅いのでしょうか
Aそうとは限りません。骨折の場所や状態によって、その時点からの治療の進め方を検討します。まずは、現在の状態を確認することが出発点になります。
Q子どもの捻挫でも、骨の確認は必要ですか
A成長期のお子さんの骨には、成長に関わるやわらかい部分があり、大人とは傷め方が異なることがあります。痛みや腫れが続く場合や、骨の出っぱりを押すと痛がる場合は、一度確認されることをおすすめします。
まとめ
- 捻挫と同じ捻り方で、足首のまわりの小さな骨が折れることがある
- 骨折の場所によっては歩けるため、最初は分かりにくいことがある
- 代表的な場所は、外くるぶしの先端・第5中足骨のつけ根・かかとの骨の前の端・距骨の外側の4つ
- 時間がたってからでも、診察と画像検査で骨の状態を確かめられる
- 治療は骨折の場所と状態で変わる。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介する
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