「捻挫のあと、足首がグラグラして不安がある」
「段差で足首が急に外れる感じがして、崩れそうになった」
「捻挫が癖になってしまい、年に何回も捻る」
この感覚は「気のせい」でも「体質」でもありません。医学的には慢性足関節不安定症と呼ばれる状態で、明確なメカニズムがあります。そしてメカニズムがある以上、対応する方法もあります。
この記事では、足首のぐらつきがなぜ起きるのか、セルフチェックの方法、そしてどう対応していくのかを整理します。
監修:宇賀治 修平(さくら通り整形外科クリニック 院長・整形外科専門医)
「足首が外れる感じ」の正体
歩行中や着地の際に、意図せず足首が内側にガクッと入り込んでしまう現象を、医学的には giving way(ギビングウェイ)と呼びます。
この現象には2つの異なる原因があり、実際には両方が混在していることが多いとされています。この区別は、後述する対応の方針を決めるうえで重要です。
原因1:構造的な不安定性(メカニカル・インスタビリティ)
捻挫で損傷した靭帯が十分に修復されず、関節を支える力が弱いままになっている状態です。前距腓靭帯や踵腓靭帯が伸びた状態で治癒すると、物理的に関節のゆるみが残ります。
徒手検査(前方引き出しテストなど)や、ストレスをかけた状態での画像評価で確認できます。
原因2:機能的な不安定性(ファンクショナル・インスタビリティ)
靭帯そのものよりも、神経と筋肉の反応が遅れている状態です。
足首には、関節の傾きや位置を感知するセンサー(固有受容器)が備わっています。足首が内側へ傾きはじめた瞬間、このセンサーが察知し、腓骨筋という筋肉が反射的に働いてブレーキをかけます。この一連の反応は、意識して行うものではなく、無意識下の反射です。
捻挫でこのセンサーが損傷すると、傾きの感知が遅れ、ブレーキが間に合わなくなります。「靭帯は治っているはずなのにグラつく」という方は、こちらが主因である場合があります。
検査画像では異常が見つからないため、「異常なし」と言われて納得できないまま過ごしている方が一定数いらっしゃいます。

なぜ一度捻ると、グラつきが残りやすいのか
一度捻挫を起こすと再受傷しやすくなることは、スポーツ医学の領域で繰り返し報告されています。ここでは、なぜグラつきが残るのかという点にしぼって整理します。
起きていることは連鎖です。
- 捻挫で靭帯とセンサーが損傷する
- 反応が遅れ、支持力も落ちる
- わずかな段差でも捻りやすくなる
- 再び捻挫する
- さらに損傷が進み、反応がより遅れる

この連鎖は、どこかで意図的に介入しない限り自然には止まりません。「そのうち慣れる」「痛みがないから大丈夫」という判断で放置されやすいのが、この状態の難しさです。
セルフチェック
以下に複数該当する場合、慢性足関節不安定症の可能性があります。
- 月に1回以上、足首が崩れる・外れる感覚がある
- 平らな場所でも、ふとした瞬間に足首を捻りそうになる
- 砂利道、芝生、段差を無意識に避けている
- 捻挫を年に2回以上繰り返している
- 片脚立ちが、反対側と比べて明らかにふらつく
- 目を閉じて片脚立ちをすると、数秒も保てない
- 走る、飛ぶ、切り返すといった動作に不安がある
- 痛みはないが、足首のゆるみが気になる
片脚立ちテストのやり方
壁や手すりのそばで、片脚で立ちます。安定するようであれば目を閉じてみてください。左右で保てる時間に明らかな差がある場合、足首の感覚機能が低下している可能性があります。
※転倒の危険がありますので、必ず支えのある場所で、無理のない範囲で行ってください。

複数当てはまった方へ ― このチェックだけで状態を決めることはできません。評価の流れと当院の体制を見る →
放置した場合に考えられること
不安定な状態が続くと、足首の関節に偏った負荷がかかり続けます。その結果として、軟骨の損傷や、長期的には変形性足関節症へつながる可能性が指摘されています。
また、日常生活面では次のような影響が出ることがあります。
- 段差や不整地を避けるようになり、活動量が落ちる
- スポーツでのパフォーマンスが戻らない、思い切って踏み込めない
- 反対側の足に負担が偏り、膝や股関節に症状が出る
- 転倒への不安から、高齢の方では外出頻度が下がる
症状が「痛み」ではなく「不安」であるために、受診の優先度が下がりやすいのがこの状態の特徴です。
なお、グラつきではなく痛みが長引いている場合は、捻挫から3週間以上たっても足首が痛いときもあわせてご覧ください。
どのように評価するか
当院では以下の観点で確認します。
問診
どんな場面で崩れるか、頻度、初回の受傷はいつか、そのときどのような治療を受けたか。過去の経過が現在の状態を説明する手がかりになります。
徒手検査
前方引き出しテスト、内反ストレステストなどで、関節のゆるみの程度と左右差を確認します。
超音波エコー
足首を動かしながら靭帯の状態を観察します。静止画像では捉えられない、ストレス下での靭帯の伸び方を確認できます。
レントゲン/MRI
骨棘の有無、軟骨の損傷、骨挫傷の有無を確認します。不安定性が長期化している場合、二次的な損傷が生じていることがあります。
機能評価
理学療法士が、片脚立位バランス、足関節の可動域、腓骨筋の筋力、動作パターンを評価します。
構造的か、機能的かを見分ける
この2つは、確認する方法も、そのあとの対応も異なります。
| 構造的な不安定性 | 機能的な不安定性 | |
|---|---|---|
| 確認する方法 | 徒手検査、ストレスをかけた状態での画像、超音波エコー | 片脚立位バランス、腓骨筋の筋力、動作の評価 |
| 画像での見え方 | 関節のゆるみとして確認できることがある | 異常として写らないことが多い |
| 対応の中心 | 装具の併用。改善しない場合は手術も選択肢になります | バランス訓練と筋力トレーニング |
実際には両方が混在していることが多く、どちらの要素が強いかで力点が変わります。
構造的な問題が主なのか、機能的な問題が主なのかによって、取るべき対応が変わります。 ここを区別せずにリハビリを始めても、狙いがずれてしまいます。
対応の考え方
リハビリテーション
機能的不安定性に対しては、腓骨筋を中心とした筋力トレーニングと、バランス訓練(固有受容感覚の再教育)が基本になります。
段階の例:
- 両脚立位での重心移動
- 片脚立位(開眼→閉眼)
- 不安定面(バランスディスク等)での片脚立位
- 動きを伴う課題(片脚での方向転換、キャッチボール等)
- 競技・生活動作に近い課題(ジャンプ着地、切り返し)

どの段階から始めるかは評価によって決まります。段階を飛ばすと再受傷のリスクがあるため、負荷の上げ方には判断が必要です。
当院には理学療法士が11名在籍しており、評価に基づいた個別のプログラムを組んでいます。
装具・テーピング
活動時の再受傷を防ぐ目的で併用します。ただし装具は「装着している間だけ」支える手段であり、これ単独では根本的な改善にはつながりません。リハビリと組み合わせることが前提です。
競技復帰の段階では、装具で保護しながらリハビリを進めるという併用が現実的です。
手術
保存的な対応で改善しない高度な不安定性に対しては、靭帯修復・再建術が選択肢になります。手術が必要と判断した場合の進め方は、診察の際にご説明します。適応の判断は、画像所見、症状の程度、活動レベル、保存療法の経過を総合して行います。
よくあるご質問
Q痛みがないのに受診する必要がありますか
A痛みの有無と不安定性の程度は必ずしも一致しません。痛みがないまま不安定性が続き、後から軟骨損傷が見つかるケースがあります。崩れる感覚が月に1回以上ある場合は、一度確認されることをおすすめします。
Qサポーターを使えば治りますか
Aサポーターは装着中の再受傷を減らす目的の手段です。外した状態での安定性を改善するには、筋力とバランス機能への働きかけが必要になります。両者は役割が異なります。
Q何年も前の捻挫でも関係ありますか
A関係することがあります。初回受傷から年単位が経過していても、不安定性が残り続けているケースは珍しくありません。受傷時期にかかわらず、現在の症状で評価します。
Qリハビリはどれくらいの期間かかりますか
A状態と目標によって異なります。日常生活レベルの安定と、競技復帰レベルの安定では必要な期間が変わります。評価のうえで見通しをお伝えします。
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