「軽い捻挫だと言われたのに、1か月たっても痛みが引かない」
「歩けるようにはなったが、走ると必ず同じ場所が痛くなる」
「腫れは引いたのに、体重をかけると奥のほうが痛い」
足関節の捻挫は、多くの場合2〜6週間で日常生活に支障のない状態まで回復していきます。ところが、その期間を大きく超えて症状が残る方が一定数いらっしゃいます。
このとき起きているのは「治りが遅い」ではなく、最初の評価で捉えきれていなかった別の損傷が残っているというケースが少なくありません。靭帯は修復されているのに痛みが続く、という状況には理由があります。
この記事では、長引く足首の痛みで考えられる6つの原因と、それぞれをどう区別し、どう確認するかを整理します。

監修:宇賀治 修平(さくら通り整形外科クリニック 院長・整形外科専門医)
前提:足首の捻挫はどれくらいで回復するのか
足関節の内反捻挫(足首を内側にひねる形)では、外くるぶしの前方にある前距腓靭帯が最も損傷を受けやすい靭帯です。力がさらに加わると、その下にある踵腓靭帯も損傷します。
損傷の程度は一般に3段階で評価されます。
- Ⅰ度靭帯が引き伸ばされた状態。腫れ・痛みは軽度で、歩行は比較的可能
- Ⅱ度靭帯の部分断裂。腫れと皮下出血がはっきり出て、体重をかけると痛む
- Ⅲ度靭帯の完全断裂。強い腫れと不安定感を伴う
- 前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)
外くるぶしの前。最も傷つきやすい靭帯 - 踵腓靭帯(しょうひじんたい)
外くるぶしの下。力が強いと傷つく
回復の目安はⅠ度で1〜2週間程度、Ⅱ度で3〜6週間程度、Ⅲ度ではさらに長期を要することがあります。ただしこれは目安であり、年齢、活動量、初期の固定の適切さ、リハビリの有無によって実際の経過は変わります。
ここで押さえていただきたいのは、この目安を大きく超えて痛みが続く場合、靭帯以外の問題を疑う段階に入るということです。「もう少し様子を見れば治る」という判断を繰り返すと、確認の機会が遅れます。
- 足首の奥
原因1 距骨骨軟骨損傷 - 外くるぶしの後ろから下
原因2 腓骨筋腱の障害 - 足首の前面
原因3 前方インピンジメント症候群 - 外くるぶしの先端/足の外側の中ほど
原因4 見逃されていた骨折 - 外くるぶしの前下のくぼみ
原因6 足根洞症候群
原因1:距骨骨軟骨損傷(きょこつこつなんこつそんしょう)
足首をひねった際、距骨という骨の上面の軟骨と、その直下の骨がへこむように傷つくことがあります。
これが見逃されやすいのは、受傷直後のレントゲンではほとんど写らないためです。靭帯損傷として治療を受け、腫れも引いたのに、「体重をかけると足首の奥が痛い」「足首の中で引っかかる感じがする」という症状だけが残ります。
疑うサイン
- 体重をかけたときに、表面ではなく深部に痛みが出る
- 足首の奥で引っかかる、ゴリッとする感覚がある
- 腫れは引いたのに痛みだけが残っている
- 階段の下りや、着地の瞬間に痛む
確認方法
MRIが有効です。軟骨の状態、骨の内部の変化(骨挫傷、骨嚢腫)まで確認できます。レントゲンでは進行した段階にならないと判別が困難です。
原因2:腓骨筋腱(ひこつきんけん)の障害
外くるぶしの後ろから下を回り込むように走る腓骨筋腱は、足首を外側へ返す働きと、足首が内側へ倒れるのを防ぐブレーキの役割を担っています。
捻挫の際にこの腱が傷ついたり、腱を押さえている組織(上腓骨筋支帯)が損傷すると、外くるぶしの後ろから下あたりの痛みが慢性的に続きます。
疑うサイン
- 痛む場所が「外くるぶしの前(靭帯の位置)」ではなく、後ろから下
- 足首を外側に返すと痛い、あるいは力が入りにくい
- 歩くときに外くるぶし付近で何かが動く、乗り越える感覚がある
- 片脚立ちが不安定
確認方法
超音波エコーによる動的な観察が役立ちます。実際に足首を動かしながら腱の走行と滑走を見ることで、腱の損傷や、腱が正常な位置から外れていないか(腓骨筋腱脱臼・亜脱臼)を確認できます。
原因3:足関節前方インピンジメント症候群
捻挫を繰り返したり、初回の損傷が大きかった場合、足首の前方に骨のとげ(骨棘)や、厚く硬くなった組織ができることがあります。足首を反らせる動作で、これらが骨の間に挟み込まれて痛みが出ます。
疑うサイン
- しゃがみこむと足首の前がつまって痛い
- 階段や坂道を上がるときに足首の前が痛い
- 足首を反らせる角度が、反対側より明らかに狭い
- 正座やスクワットの深さが左右で違う
確認方法
レントゲンで骨棘の有無を確認します。骨ではなく軟部組織が原因の場合は、MRIでの評価が必要になることがあります。
原因4:見逃されていた骨折
「捻挫」として扱われていたものが、実際には小さな骨折だったというケースがあります。特に以下の4つは、骨片が小さい、他の骨と重なる、撮影角度によって写りにくいといった理由で、初回のレントゲンで判別が難しい骨折として知られています。

- 第5中足骨基部骨折(足の小指側の付け根)
- 腓骨遠位端の剥離骨折(外くるぶしの先端)
- 距骨外側突起骨折
- 踵骨前方突起骨折
疑うサイン
- 靭帯の位置ではなく、骨そのものを押すと痛む
- 痛む場所が足首ではなく足の甲や小指側
- 受傷から時間が経っても痛みの強さがほとんど変わらない
確認方法
時期をおいて再度レントゲンを撮影すると、骨癒合の反応によって判明する場合があります。判別が難しい場合はCTやMRIを検討します。
原因5:慢性足関節不安定症
靭帯の修復が不十分なまま活動を再開すると、足首のぐらつきが残り、軽い段差でも捻りやすい状態が続きます。この場合、主訴は「痛み」よりも「不安感」「力が抜ける感覚」になるのが特徴です。
痛みと不安定性は別の問題であり、両方が同時に存在することもあります。
原因6:足関節以外に原因がある場合
頻度は高くありませんが、捻挫とは別の病態が並行している、あるいは捻挫を契機に別の問題が顕在化している場合があります。
- 足根洞症候群(外くるぶしの前下方のくぼみの痛み)
- 有痛性外脛骨(足の内側の出っ張りの痛み)
- アキレス腱付着部の障害
- 炎症性疾患や感染
特に、腫れや熱感が引かない、安静時や夜間にも痛む、発熱を伴うといった場合は、捻挫の経過としては非典型的です。早めの確認が必要です。
なぜ長引く痛みは見逃されやすいのか
理由は3つあると考えられます。
1つ目は、受傷直後は腫れと痛みが強く、細かい部位の特定が難しいことです。腫れが広がっている段階では、どの組織が痛みの原因かを絞り込みにくくなります。
2つ目は、レントゲンで「異常なし」という結果が、安心材料として受け取られやすいことです。レントゲンは骨を見る検査であり、靭帯・腱・軟骨は写りません。「骨に異常がない」と「どこにも損傷がない」は別の意味です。
3つ目は、痛みが軽くなる時期があるため、経過観察が途切れやすいことです。腫れが引いて日常生活に戻れると、残った症状が「そのうち治るもの」として扱われてしまいます。
長引く痛みをどう確認するか
受傷から時間が経った痛みを評価する場合、レントゲンだけでは情報が足りません。
- レントゲン骨の形、骨折、骨棘、関節の隙間の確認
- 超音波エコー靭帯・腱を動かしながら観察する動的評価
- MRI軟骨、骨挫傷、靭帯・腱の内部の状態を断層で確認
どの検査が必要かは、痛む部位と症状の出方によって変わります。診察で部位を絞り込んだうえで、必要な検査を選択します。
当院ではレントゲン、超音波エコーに加え、MRIを院内に設置しています。どの検査を行うかは、診察のうえで医師が判断します。

よくあるご質問
Q.痛みはあるが歩けています。急いで受診する必要はありますか
A.歩けるかどうかは損傷の程度を示す指標にはなりません。骨折があっても歩ける場合があり、逆に靭帯損傷のみでも歩行困難になることがあります。受傷から3週間以上症状が続いている場合は、歩行の可否にかかわらず一度確認することをおすすめします。
Q.他院で「異常なし」と言われましたが、まだ痛みます
A.レントゲンで骨に異常がないことと、軟部組織や軟骨に損傷がないことは別です。時間が経過してから判明する損傷もあります。経過と症状をお聞きしたうえで、必要な検査を検討します。
Q.リハビリだけで良くなりますか
A.原因によります。機能的な問題が主であればリハビリが中心になりますが、軟骨損傷や骨折が背景にある場合は、まず何が起きているかを確認することが先になります。原因を特定せずにリハビリを行うと、狙いがずれることがあります。
Q.MRIは保険がききますか
A.医師が必要と判断した場合、公的医療保険の適用対象です。自己負担割合に応じた窓口負担が発生します。
ご予約・ご相談
捻挫から3週間以上たっても痛みが続く場合、靭帯以外の損傷が残っている可能性があります。
さくら通り整形外科クリニック(福井市日之出)/整形外科・リハビリテーション科
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