【うがじ流・人生の処方箋】
こんにちは。さくら通り整形外科クリニック院長の宇賀治修平です。
誰かと一緒に取り組むと、自分ひとりでは思いつかなかったようなアイデアがポンッと出てくることってありませんか?「なるほど、そういう見方もあるんだ!」って新しい視点がもらえたり、自然とやる気が湧いてきたり。人と関わるって、ただの“協力”以上に、大きなエネルギーになるんですよね。そして不思議なことに、誰かが一生懸命頑張っていると、まわりにもその輝きが伝わって、また別の誰かが「ちょっと手伝おうかな」って集まってくる。その中に、思いもよらない“ご縁”があることも。
だから最近は、「誰かを巻き込んで、みんなで何かを成し遂げるって、すごく面白いことなんじゃないか」と、そんなふうに感じています。
もしよかったら、あなたのまわりの誰かを今日ちょっと巻き込んでみませんか?
そこから、きっと何かが始まる気がします。
きっと、相手だけでなく、自分自身の気持ちも少し軽くなるはずです。
【なぜサッカーで足首の捻挫が多いのか?】
「先生、昨日の試合でまた足首を…」 サッカーを頑張る患者さんから、そんな相談を受けることは珍しくありません。
サッカーでは、ボールを追いかけながら激しい切り返しや接触プレーを繰り返すため、足首への負担が非常に大きくなります。特に人工芝やスパイクを履いた状態では、足が固定されやすく、ひねりやすくなるのです。
今回は、実際にサッカーで捻挫を経験した患者さんの声を交えながら、「どんな場面で足首をひねるのか」「どうすれば予防できるのか」についてお話していきます。
スライディング回避中に「足がひっかかって…」
「相手のスライディングを避けようとしてジャンプしたんですけど、着地のときにスパイクが引っかかって、足首を内側にグキッと…」
サッカーでは、スパイクが芝や地面に食い込むことで、足が固定されてしまうことが多々あります。その状態で接触や着地がズレると、足首に大きなねじれが加わり、捻挫につながります。
トラップでバランスを崩して「変な着地に…」
パスをトラップしようとした瞬間に起きた出来事を患者さんがこう振り返ってくれました。
「浮き球をトラップしようとして体がちょっと反れて…片足に全体重が乗った瞬間、足首を外にひねっちゃったんです」
サッカーではボールへの集中と同時にバランスを取る必要があり、特に空中でのボール処理では体勢を崩しやすくなります。着地時に足首へかかるストレスが大きくなり、捻挫しやすいのです。
パスカット直後の切り返しで「足がついてこなかった」
「パスをカットしたあと、すぐに逆方向に切り返そうとして…。そのとき足首が遅れて、外にねじれました」
これは、練習中に負った捻挫のエピソードです。サッカーでは一瞬の判断で方向転換を繰り返しますが、筋肉や感覚が準備できていないと、足首が“置いていかれる”ような形になり、ケガにつながってしまいます。
ゴール前の接触で「踏まれてグキッと」
ゴール前の混戦時、相手選手と交錯した際のお話です。
「倒れ込んだ選手の足が自分の足の甲に乗っかって…。その状態で体勢を変えようとしたら、足首に変な力がかかってやっちゃいました」
特にゴール前は選手同士の距離が近く、踏まれたり、足が引っかかったりすることで足首がロックされる場面が多くなります。そのまま倒れることで、捻挫だけでなく骨折に至ることもあります。
成長期で「なんとなく踏ん張りがきかない」
中学の選手が、普段の練習中の感覚をこう話してくれました。
「最近、切り返しのときにグラグラするんです。地面をちゃんと踏めてない感じがあって…」
成長期の子どもたちは、急激に伸びる骨に筋力やバランスが追いつかず、足首の安定性が低下することがあります。特別な接触がなくても、疲労の蓄積やちょっとしたズレで捻挫をしてしまうこともあります。
【きちんと治す=長くプレーするための“準備”】
「少し痛かったけど、大事な試合だったからテーピングして無理して出ました」 そんな声を聞くことも多くありますが、実際には、無理して出場すると治りが遅くなるだけでなく、再発リスクも高まるのです。
サッカーのような動きの多い競技では、捻挫後の可動域・筋力・固有感覚の回復がとても重要です。
【リハビリ】復帰までの正しいステップ
「腫れは引いたし、もう大丈夫だと思って練習に戻ったら、またひねっちゃって…」
サッカーはプレー強度が高く、方向転換・加速・ストップ・ジャンプといった動作が繰り返されるスポーツです。だからこそ、ただ「痛みがない」だけでは、完全復帰とは言えません。
本当の意味での競技復帰には、筋力・関節の動き(可動域)・バランス感覚(固有感覚)の回復が必要不可欠です。
炎症期(受傷直後〜3日程度)
・腫れと痛みを抑えることが最優先です。
・RICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)を徹底。
・無理に動かさず、足を心臓より高く上げて安静に。
修復期(3日〜2週間)
・痛みが和らいできたら、軽い可動域トレーニングを始めます。
・タオルギャザー(足指でタオルをたぐり寄せる)、足首回し、軽いストレッチで柔軟性を取り戻します。
・荷重練習も、最初は両足 → 片足と徐々に進めていきます。
回復期(2〜4週間)
・ふくらはぎや足首周囲の筋力強化(カーフレイズ、チューブ抵抗運動など)を行います。
・バランス練習(片脚立ち、不安定マットでの荷重練習など)を通して固有感覚を回復。
・サッカー特有の動作(サイドステップ、切り返し、パス・トラップ動作)も、段階的に再現していきます。
復帰判断
以下の条件をすべてクリアして、初めて“復帰OK”のサインです。
・足首の可動域に左右差がない
・走る・ジャンプ
・切り返しをしても痛みや不安がない
・片脚で目を閉じて10秒以上バランスを保てる
・監督・トレーナー
・医療者と相談しながら判断する
【再発を防ぐには?】3つの具体的な習慣
足首の捻挫は「一度やったらクセになる」とよく言われます。 これは単なる噂ではなく、靱帯が一度伸びると関節の安定性が下がり、感覚も鈍くなるため、実際に再発率は高くなります。
だからこそ、復帰後も意識した習慣づけが重要です。
ウォーミングアップとストレッチの質を上げる
サッカーでは、アップ不足の状態で試合に入ると、足首への負担が一気に高まります。 静的ストレッチだけでなく、動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)を取り入れるのがポイントです。
おすすめ動作
- アキレス腱・ふくらはぎ・足裏のストレッチ
- 足首の回旋運動(前後・左右・内外旋)
- その場ジャンプやスキップで神経のスイッチを入れる
「ちゃんとストレッチしたつもりでも、動けなかった…」という選手は、体を“止めた状態”でしか伸ばしていないことが多いです。
実際の動きに近づけることを意識してみましょう。
バランストレーニングで“感覚”を鍛える
足首の安定性は、筋力だけでなく「どれだけ素早く危険を察知できるか(固有感覚)」も非常に重要です。
おすすめトレーニング
- 片脚立ち(目を閉じて10秒以上)
- バランスボードやエアクッション上でのパス練習
- 不安定な足場でジャンプ→着地動作
「階段を下りるのが怖くなくなった」「プレー中の一瞬のズレにも反応できるようになった」——そう話す選手も多くいます。
テーピング・サポーターの“正しい付き合い方”
サポーターやテーピングは、心の安心にもつながります。 ただし、ずっと頼りきりになると、足首の本来の機能が弱くなってしまうため、段階的に“卒業”することが目標です。
使用ルールの目安
- 試合や強度の高い練習時のみ使用
- 日常練習ではなるべく使わず、自分の筋力と感覚で支える
- テーピングの巻き方を医療スタッフに教わって正しく使う
サポーターは「助け」ではなく「補助輪」。
最終的には自分の足でしっかりと立てるようにすることがゴールです。
最後に:ケガを“学び”に変える時間
「ケガをしたことで、自分の体と向き合うようになった」 ——そう話してくれた患者さんもいます。
足首の捻挫は避けられないこともありますが、そのあとの行動で将来のプレーが大きく変わります。
焦らず、正しいリハビリと習慣で、“ケガからの学び”を力に変えていきましょう。
私たちも、全力であなたの復帰と成長をサポートしていきます。