応急処置(RICE)のあと、何もしない人が陥る罠
こんにちは、さくら通り整形外科クリニックの宇賀治 修平です。
足首を捻った直後、
「とりあえず冷やしておこう」
「今日は安静にして、様子を見よう」
そんなふうに考えたことはありませんか?
突然のケガに対して、
まず落ち着いて対処しようとするその判断は、
決して間違いではありません。
多くの方が、捻挫をした瞬間に応急処置として
RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)
を思い浮かべます。
これは、とても正しい反応です。
むしろ、何もしないより、はるかに良い判断です。
実際、捻挫直後にRICEを行える方は多くありません。
そう考えると、
RICEを思い出して実行できた時点で、
すでに「適切な初動」ができていると言えます。
ただし、ここに一つだけ、
とても見落とされやすいポイントがあります。
RICEは、
「治療」ではなく「被害拡大を止めるための対応」です。

なぜRICEで「やることは終わった」と感じてしまうのか
RICE処置を行うと、
多くの場合、比較的早い段階で次のような変化が現れます。
これらの変化は、
「ちゃんと対処できた」という安心感を与えてくれます。
見た目も落ち着き、
痛みも和らいでくると、
「ひとまず大丈夫そうだな」
と感じるのは、ごく自然なことです。
実際、何もせずに放置した場合と比べれば、
RICEを行ったことで状態が落ち着いているのは事実です。
そのため、
「今できることはやった」
「とりあえず大丈夫そうだ」
と感じるのは、決して甘い判断ではありません。
さらにRICEは、
学校の保健体育や部活動、インターネットなどを通じて
「捻挫=RICE」として広く知られています。
知っている対処法を、
実際に自分で実行できた。
この事実が、
「正しい判断ができた」という感覚を、
より強くしてくれます。
だからこそ、
「RICEをした=やるべきことは終わった」
と感じてしまうのは、決して不思議なことではありません。
ただ、ここで一度だけ、
少し立ち止まって考えてみてください。
RICEが対応しているのは「その瞬間」だけ
RICE処置の目的は、主に次の点にあります。
つまりRICEは、
ケガをした「直後の被害」を食い止めるための対応です。
言い換えると、
「これ以上悪くならないようにブレーキをかけた状態」
とも言えます。
一方で、RICEでは次のことまでは行っていません。
ここが、
応急処置と治療の決定的な違いです。
応急処置のあと、体はどうなっているのか
RICEによって炎症が落ち着いたあと、
足首の中は「完全に元どおり」になっているでしょうか。
見た目や痛みだけを見ると、
「もう治ったように見える」
ことも少なくありません。
しかし実際には、
次のような状態が残っていることがあります。
炎症が落ち着くと、
体は「もう問題ない」と勘違いしやすくなります。
その結果、
ズレや不安定さを抱えたままでも、
普段どおりの生活に戻れてしまうことがあります。

「何もしない期間」に起きていること
RICEのあと、
特に治療や調整を行わずに過ごしている期間。
この時間は、
「回復を待っている時間」ではありません。
体の中では、
次のようなことが静かに進んでいます。
これは体が悪いわけではなく、
「今できる方法で生活を成り立たせよう」とする自然な適応です。
ただしこの適応が長く続くと、
「治ったようで治っていない状態」が、
少しずつ固定されていきます。
Q&A:RICEのあとによくある疑問


回復を完成させるための調整や判断までは行っていません。

Q2. 腫れや痛みが引いたなら、もう治ったと考えていいですか?

関節のズレや動きの不安定さが残っている場合があります。

Q3. 普通に歩けているなら、特に問題はないのでは?

かばった動きが定着しているケースもあります。

Q4. 何もしないで様子を見るのは、そんなに良くないですか?

回復を待つ時間ではなく、治り方が固定されていく時間になることがあります。

Q5. RICEのあと、結局いちばん大事なことは何ですか?

その判断が、回復を左右します。
自己チェック:応急処置のあと
RICEのあと、
次の点を静かに確認してみてください。
まとめ:応急処置は「止血」、治療は「再建」
応急処置=被害拡大を止めただけ。
回復を完成させるには、その先が必要です。
読んだあとに、ひとつだけ残してほしいこと
RICEをした自分を、否定する必要はありません。
それは、正しい最初の一歩です。
ただ、こう問いかけてみてください。
今日できる行動は、ひとつで十分です。
応急処置で止まった時間は、
そのまま「治り切らなさ」として残ることがあります。
だからこそ、
RICEの次に何をするかが、
回復を左右します。



